行政書士試験情報サイト
人権



■人権

1、人権:人としての権利のことを人権という。人権は大きく分けて、(1)幸福追求権と法の下の平等、(2)自由権、(3)社会権、(4)受益権、(5)参政権の5つに分けることができる。

2、享有主体:人権を持っている人のことを享有主体という。日本国民に対しては基本的にほとんどの人権が認められているが、外国人や法人に対しては一部が制限されている。

3、外国人:判例では、外国人は、入国の自由、在留の自由は認められておらずビザが必要である。また、国会議員を選ぶ為の選挙権も認められていない。地方議員を選ぶ選挙権の場合、憲法上保障されていないが、他の法律を持って外国人に与えても良いとなっているだけで、選挙権を与えることが禁止されているわけではない

4、法人:判例では、会社による政治献金は認められているが、税理士会による政治献金は認められていない。

5、在監者:監獄に入っている人を在監者という。在監者には一部の人権が制限されている。例えば、喫煙の自由や新聞・図書閲読の自由はない

6、公務員:公務員は労働基本権が制限されており、ストライキは禁止されている。また、政治活動についても制限されている

7、私人間の人権:憲法には、国が国民の人権を侵すことを禁止するよう書かれているが、国民と国民(私人間)の関係についてはかかれていない。そこで、憲法の下にある民法などを使い間接的に、国民が国民の人権を侵すことを禁止している。これを間接適用説という。例えば、民法の規定を使い、男女の間に定年年齢に差を設けるのは無効としている。

8、公共の福祉:全国民の利益のことを公共の福祉といい、個人の人権よりも尊重される。また、国民は人権を濫用(好き勝手に使うこと)してはいけないとされている。

■幸福追求権と法の下の平等

1、幸福追求権:憲法13条では、国民が幸福を追求する権利が認められている。ただし、50年以上前に作られた憲法なので当時大事と思われていた権利についてのみ書かれてある。現在においては、その当時問題とならなかった権利も多い。裁判所ではそれらの権利が、人権か否かを判断するに当り憲法13条を使い、人権として認められた場合には、新しい人権として他の人権と同じ扱いを受けることになる。

2、新しい人権(幸福追求権):一部の緊急性がある時を除いて、警察官が正当な理由なしに個人の容貌を撮影してはいけない。これを肖像権という。他人の私生活をみだりに公開してはいけない。これをプライバシー権という。

3、法の下の平等:国民はみな平等であり、不合理な差別をしてはいけない。これを法の下の平等という。ただし、子供を労働基準法で保護するなどのように合理的な区別はしていいことになっている。

4、尊属殺人(法の下の平等):自分の親や祖父母などを殺害することを尊属殺人といい、刑法200条では死刑又は無期懲役という重い刑罰が定められていた。しかし、他の殺人の刑罰と比べ差が大きすぎるので違憲判決がだされ、刑法200条は削除された。

5、嫡出子と非嫡出子(法の下の平等):嫡出子と非嫡出子の間で、法定相続分に差を設けるのは合理的な区別なので、合憲と裁判所では判断された。

6、一票の差(法の下の平等):衆議院議員総選挙で、Aは有権者10万人に対し1人の議員、Bは有権者2万人対し1人の議員を選ぶ場合、AとBでは一票の重みが5倍違うことになる。裁判では、一票の差は違憲だが、選挙のやり直しは難しいので取消しはしないという判決が出された。

■自由権

1、自由権:自由権とは、国が個人の領域に対して権力的に介入することを排除し、それによって個人の自由な意思決定と活動を保障する権利である。大きく分けて精神的自由権、経済的自由権、人身の自由などがある。

2、思想および良心の自由(精神的自由権):人がどのような考えをしていても、それがその人個人の心の中だけに終わるのであれば国は心の中には介入しない。もし、国が人の考えを強制的に言わそうとした場合には、沈黙の自由があり言いたくないことは言わなくてもよい。

3、沈黙の自由(精神的自由権):裁判で悪いことをした人間(会社)に対し、新聞に謝罪広告を掲載するよう命じられることがある。これは沈黙の自由に反しないのかと問われたが、判例では、事情を説明し謝罪する程度であれば憲法には違反しないとしている。

4、信教の自由(精神的自由権):どの宗教を信じても、信じなくても自由である。これを信教の自由という。無宗教である自由も保障されている。

5、政教分離の原則(精神的自由権):国と宗教は分けなければいけないということが憲法には書かれており、これを政教分離の原則という。判例では、津市が行った地鎮祭に支出された公金は合憲、愛媛県知事が靖国神社に支出した玉串料は違憲となっている。

6、学問の自由(精神的自由権):学問の自由は具体的に分けると、自分のしたい学問を研究できる学問研究の自由と学んだ学問を発表できる研究発表の自由と学んだ学問を他人に教えることができる教授の自由の3つがある。判例では、学問の自由を保障する為に、学問の中心である大学の自治(大学内の問題について国が関与しないこと)は認められている。ただし、大学内で学生が政治的、社会的な活動を行った場合、自治は認められない。また別の判例では、大学での教授の自由は完全に認められているが、小中高では生徒が学校や先生を自由に選べないので小中高の先生の教授の自由は完全には認められていない

7、表現の自由(精神的自由権):自分が思っていることや感じていることを言葉や文書などで外部に表す自由を表現の自由という。ただし、公共の福祉を考えて一定の制約がある。判例では、他人の家にビラを貼ることは禁止されている。また別の判例では、わいせつな文書の頒布や販売が規制されることは合憲であるとされている

8、報道の自由(精神的自由権):表現の自由にはマスコミなどによる報道の自由が含まれており、憲法で保障されている。

9、取材の自由(精神的自由権):取材の自由については判例で、十分尊重に値するとされ、場合によっては制限される。判例では、新聞記者の取材に協力して情報をくれた人(取材源)について、裁判所がその新聞記者に証言させても違憲ではないとされている。

10、検閲(精神的自由権):国による検閲は今の憲法では絶対に行ってはいけないことになっている。ただし、判例では教科書検定、税関検査、裁判所の事前差止めについては検閲には当たらないので行ってよいとされている

11、職業選択の自由(経済的自由権):好きな仕事を自分で選ぶ自由を職業選択の自由という。また、仕事をどのようにやっていくかの自由を営業の自由という。ただし、資格が必要なものや許可が必要なものについては、公共の福祉を守る為の規制なので許されている。裁判で、既に営業している店の近くに新規に開業する場合、距離を開けなさいという法律があるがこれは職業選択の自由に反しないか争われたことがある。判例では、公衆浴場と小売市場は法律で定めた距離を開ける必要がある(合憲)とされ、薬局は法律が定めた距離は無効であり距離はあけなくても良い(違憲)とされた

12、財産権(経済的自由権):財産権とは、自分の財産はその人個人の物として保障されるという権利のことであり、憲法で認められている。

13、正当な補償(経済的自由権):財産権は認められているが、しかし、国が道路を作ろうとした場合などは誰かの土地を買い上げる必要がある(土地収用)。当然この場合、土地の所有者に対して国は正当な補償をしなければならない。判例では、正当な補償について、(1)時価相当額である完全な補償をしなければならない、(2)時価相当額を下回る相当な補償でもよいの二つの判例がある。相当な補償については戦後すぐに出された判例なので、一般的には完全な補償がされる。

14、財産権の制限(経済的自由権):財産権は、個人が好き勝手に濫用すると公共の福祉に反する場合などは制限されることがある。判例では、ため池の周りを耕作すれば崩壊の恐れがあるので耕作をしてはいけないという制限を設けた条例が合憲とされている

15、奴隷的拘束の禁止(人身の自由):国は国民の身体を拘束して非人間的状態にするなどの奴隷的拘束を絶対にしてはいけないとされている。また、意に反する苦役(本人の意思を無視して労働させること)についても原則的に禁止されている(犯罪による処罰においてはやむを得ない)。

16、罪刑法定主義(人身の自由):犯罪を犯したときに受ける刑罰があらかじめ法律により明文化されていることを罪刑法定主義という。また、新しく作られた法律は施行される前に遡って罰することはできない。これを遡及処罰の禁止という。ある行為について一度罰せられるともう二度とその行為について罰せられることはない。これを二重処罰の禁止という。

17、令状主義(人身の自由):犯罪で人を逮捕する場合には、裁判官が発行する令状、つまり逮捕状が必要である。これを令状主義という。ただし、現行犯逮捕については犯人と犯罪が明らかなので逮捕状がなくても逮捕することができる

■社会権

1、社会権:国民が国に対し、良い生活を実現する為に国による手助けを請求する権利のことを社会権という。25条には生存権、26条には教育を受ける権利についてが書かれている。

2、生存権:25条1項に、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と書かれている。この条文は国の政策を政治的道徳的に宣言したに過ぎず、この憲法の条文だけで国に対して何かを請求することはできない。このような憲法の規定をプログラム規定という

3、教育を受ける権利:義務教育は無償である。ただし、これは授業料を徴収しないという意味である(教科書代は無料として保障されていない)。しかし現在は別の法律で教科書代も無償とされている。また国民は能力に応じて等しく教育を受ける権利があり、保護する子女に普通教育を受けさせる義務がある。

■受益権

1、受益権:受益権とは人権の保障を確実にする為に認められている権利のことである。裁判所で裁判を受ける権利や、請願権などがある。

2、裁判所で裁判を受ける権利:国民は公平な裁判所で裁判を受けることができ、自分の権利を救済してもらえる。翻せば、裁判所以外で裁判されることはないということ。

3、請願権:国民が国や地方公共団体の仕事に関して、要望を述べる権利のことを請願権という。請願権を行使したからといって国民は差別待遇を受けることはない。ただし、請願を受けた機関が、その内容を審理判定する義務を負うわけではない

4、国家賠償請求権:公務員の不法行為により損害を受けた場合、国や地方公共団体に対して損害金を求める権利のことを国家賠償請求権という。

5、刑事補償請求権:逮捕されて抑留・拘禁されていた人が無罪の判決を受けたとき、国に対してその補償を求める権利のことを刑事補償請求権という。

■参政権

1、参政権:国民が政治に参加する権利のことを参政権という。公務員の選定や、選挙権などがある。

2、公務員の選定:憲法には、「公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利である」と書かれている。ただし、すべての公務員を選ぶ権利や、罷免する権利があるわけではない。国会議員を罷免することなどは認められていない。

3、選挙権:国会議員などを選ぶ権利のことを選挙権という。1人1票(投票機会の平等)だけでなく、投票価値の平等も必要な平等選挙でなければならない。一票の格差については違憲とされている(ただし、違憲ではあるが現在も一票の格差は存在する)。

■国民の義務

1、国民の義務:子女に普通教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務の3つが国民の義務である。

トップページへ メール 掲示板 リンク
行政書士試験情報サイトです。