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統治



■統治

1、統治:国をどのようにして治めるかを統治という。

2、国民主権:現在の憲法では、権力を持つのは国民であると書かれている。これを国民主権という。

■三権分立

1、三権分立:日本の憲法は、権力を国会、内閣、裁判所の3つにわけお互いが抑制と均衡をする体制がとられている。これを三権分立という。

■国会

1、国会:国民に代わり国の政治のやり方を決める機関を国会という。

2、国会の地位:憲法では国会に、3つの地位を与えている。(1)国民の代表機関、(2)国権の最高機関、(3)唯一の立法機関の3つである。

3、国民の代表機関:国民の代表機関というのは、国会を組織する国会議員は全国民の代表であるという意味。つまり、国会議員は国会で活動するとき、全国民の利益となるための行動をする義務がある。

4、国権の最高機関:国権の最高機関というのは、国会議員は国民から選ばれた代表であるので国民に最も近い非常に重要な機関という意味(厳密には、国の権力を3つにわけたので最高ではない)。

5、唯一の立法機関:唯一の立法機関というのは、法律を作る手続は国会によって行われ(国会中心立法)、他の機関の関与は必要としない(国会単独立法)という意味。

6、国会組織:国会は、衆議院と参議院の二つからなる二院制である。二つの議院は独立して活動し、お互いをチェックしあう関係にある。ただし、衆議院のほうに強い力がある。これを衆議院の優越という。衆議院と参議院は同時に活動する。衆議院が解散されたときは、参議院も閉会となる。

7、衆議院:衆議院議員の任期は4年で、解散する場合がある。参議院議員よりも任期は短いので、国民の意見を反映しやすい。その為、衆議院の優越がある。

8、参議院:参議院議員の任期は6年で、解散はない。選挙は3年ごとにあり半分ずつ入れ替わる

9、国会議員:国会議員には3つの特権がある。(1)給料をもらうことができる歳費受領権(国会議員の給料は任期中に減額される場合がある)、(2)国会会期中は逮捕されることがない不逮捕特権(現行犯のように逮捕が認められている場合もある。また、会期中以外に逮捕された場合でも、国会が始まり所属する議院から釈放要求があれば釈放される。)、(3)議院で行った演説や表決などについて責任を負う必要はない免責特権の3つである。

10、国会活動:国会は一定の期間に限って開かれる会期制となっている。会期の種類には次のものがある。(1)常会(毎年1回、1月に開かれ、150日間行われる。延長も可能。)、(2)臨時会(常会が行われていないとき、必要に応じて行われる。延長も可能。)、(3)特別会(衆議院が解散されたとき、解散から40日以内に選挙を行い、選挙の日から30日以内に開かれる。延長も可能。)、(4)緊急集会(衆議院解散後、最高70日間の間に国会で決める必要がある重要なことが起こった場合、参議院のみで国会を代行する緊急集会を開くことができる。緊急集会は臨時のものなのでここで決められたことは、次の国会が始まり10日以内に衆議院の同意がなければ効力はない。)の4つである。

11、国会の原則:ある会期中に決まらなかったことは次の会期に継続されない。これを会期不継続の原則という。一度決まった案件については同じ会期中に再び議論しない。これを一時不再議の原則という。会議は公開するのが原則である(ただし、出席議員の3分の2以上が賛成した場合は秘密会にできる。)。これを会議公開の原則という。

12、国会の議決:国会で議決を行うには、総議員の3分の1以上の出席が必要である一部の例外を除いて、原則、出席議員の過半数の賛成があれば何かを決めることができる(賛否同数の場合は議長が決定する)。例外として、次の4つは出席議員の3分の2以上の賛成が必要である。資格争訟裁判で議員の議席を失わせる場合、議員の除名を行う場合、秘密会を開く場合、法律案を衆議院で再可決する場合。また、憲法改正の発議をする場合は、総議員の3分の2以上が必要である(出席議員ではなく総議員であることに注意)

13、法律ができるまで:法律が作られるまでには次のような過程が必要である。(1)国会議員または内閣が国会に対して法律案を提出する(衆議院、参議院どちらに先に出してもよい)、(2)提出先の議院において出席議員の過半数の賛成を得る、(3)もう一方の議院に送付され、出席議員の過半数の賛成を得る。つまり両議院で可決される必要があるのだが、もし衆議院で可決され、参議院で否決された場合は次のようになる。もう一度、衆議院において出席議員の3分の2以上の賛成を得ることができれば法律として成立する。これを衆議院の優越という。

14、衆議院の優越:衆議院の優越が認められているのは、(1)法律の制定、(2)内閣総理大臣の指名、(3)予算の議決、(4)条約の承認の4つである。内閣総理大臣の指名、予算の議決、条約の承認において衆議院と参議院の議決が異なった場合、両議院の代表による両院協議会が必ず開かれることになっている。両院協議会でも決まらない場合は、衆議院の議決を国会の議決とする衆議院の優越が認められている。

15、国政調査権:各議院は必要な情報を入手するために広く国政を調査する権能を有している。これを国政調査権という。国政とは、立法、行政、司法の三権の作用が含まれるが、司法権に対しては司法権の独立を侵すようなことがあってはならない。

■内閣

1、内閣:内閣は行政のトップとして指導や監督を行う組織である。行政権は内閣に属する。

2、内閣の組織:内閣は首長である内閣総理大臣と国務大臣からなる。内閣総理大臣と国務大臣は文民でなければならない。文民とは軍人としての経験がない者のことをいう。

3、内閣総理大臣:内閣総理大臣は国会議員(衆参どちらでもよい)の中から、国会の議決(衆参どちらからの指名でも良い。両議院の指名が異なれば、衆議院が優越する。)で指名し、天皇により任命される。

4、国務大臣:国務大臣は内閣総理大臣により任命される。過半数を国会議員から任命すれば、残りは国会議員以外より任命することができる。内閣総理大臣は、自分が任命した国務大臣を自由に罷免することができる

5、内閣の権能:内閣は行政権を持つ。外交関係を処理し、条約を結ぶことができる。天皇の国事行為に対して助言と承認を行う。

6、衆議院解散と内閣不信任決議:内閣は衆議院を解散する権利をもっている。逆に、衆議院は内閣不信任決議をすることができる(参議院も問責決議という内閣不信任決議をすることができるが、法的効力はない。また参議院に解散はない。)。内閣が内閣不信任決議をされたときは以下の図のようになる。


■裁判所

1、司法:法律を適用することによって争いを解決し、どちらが正しいのかを判断することを司法という。司法は、立法や行政などから独立しており、これを司法府の独立という。

2、裁判所:裁判所とは司法権を使うことができる唯一のところである。最高裁判所と下級裁判所(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)からなる。裁判所は司法権を持っている。また、国の行為や法律が憲法に反していないかを判断する違憲審査権ももっている(違憲審査権は最高裁判所だけではなく、下級裁判所にも認められている)。

3、裁判官:裁判官は自分の良心、憲法、法律のみに従う。これら以外からの圧力は一切受けず、独立して事件を判断しなければならない。これを裁判官の職権の独立という。裁判官の報酬は在任中、減額されることはない。任期や定年などについては以下を参照。

4、裁判官の任命と指名:指名とはある範囲の人の中から特定の人を指定することであり、任命とはある人を一定の地位につけることをいう。最高裁判所は長官1人と判事14人からなるが、長官とそれ以外では指名と任命の方法が違うので注意が必要である。以下の図を参照。


5、特別裁判所の禁止:明治時代の憲法には、特別の人や事件についてのみ扱いそこで出された判断が終審(最終的な判断のことで、これ以上訴えることができないということ)になる特別裁判所という裁判所(軍法会議などのこと)があったが、現在では設置が禁止されている。家庭裁判所は家庭の問題を扱う裁判所であるが、ここで出された判断はさらに訴えることができ終審とはならないので特別裁判所にはあたらない。しかし一つだけ例外があり、裁判官を裁くための弾劾裁判所(衆議院と参議院の議員からなる)は憲法が認めた特別裁判所である。

6、行政機関による終審裁判の禁止:行政機関には争いごとを解決する手段が認められている(行政法を参照)。しかし、行政機関で出された判断を最終結論とすることはできず、普通裁判所へさらに訴えることができる。これを行政機関による終審裁判の禁止という。

7、国民審査:最高裁判所の裁判官は、(1)任命された後初めて行われる衆議院議員総選挙、(2)その後10年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙、(3)以降は(2)と同様、の際に国民の審査に付される。選挙権を持つ国民は罷免にするべきだと考える裁判官に「X」をつけ、「X」が過半数を超えていれば、その裁判官は罷免される。

8、裁判の公開:裁判の対審と判決は公開しなければならない。対審とは訴えた方と訴えられた方が主張をしあう場のことで、判決とは裁判の結論のことである。しかし、裁判官が全員一致で、「社会全体の秩序などを害するおそれがある」と決定した場合は対審においてのみ非公開で行うことができる(判決は必ず公開しなければならない)。ただし、政治犯罪と出版に関する犯罪と国民の権利が問題になっている事件については、非常に重要な事件なので対審を非公開にすることはできず、対審も判決も公開しなければならない。

■財政

1、財政:国のお金の使い方を財政という。基本的なこととして、財政民主主義と租税法律主義という決まりがある。

2、財政民主主義:国の財政の決定は国民の代表である国会の議決が必要である。これを財政民主主義という。

3、租税法律主義:税金の賦課や徴収は法律(法律は国民の代表である国会が作る)の定めに従って行うことを租税法律主義という。

4、予算と決算:国の収入と支出の見積もりを予算という。予算は、内閣が予算案を作成し国会に提出し、議決を経てはじめて成立する。国会議員には予算案を提出する権限は認められていない。年度が終了し収入と支出が確定したときは、その内容を会計検査院が検査をする。そして会計検査院が作った検査報告書を内閣は国会に提出することになっている。また、内閣は少なくとも年に一回は国の財政状況を国会と国民に対して報告しなければならない

5、公金支出の禁止:国や地方公共団体が持っているお金を公金という。公金は特定の宗教団体のために使うことが禁止されている。また、公の支配に属さない事業に対し、公金を支出し、公金を濫用してはならない。

■地方自治

1、地方自治:国の各地方が、各地方に関しての政治は自分たちで自由に行うことを地方自治といい、地方公共団体の組織や運営方法について書かれた法律を地方自治法という。

2、地方特別法:ある特定の地方公共団体にだけ適用される法律を地方特別法といい、国会がこれを定めるときは、そこの住民に投票をさせ過半数の賛成が必要とされている。法律は国会単独立法が原則であるが国会だけで地方特別法を制定すると、そこの住民の利益にならない法律が制定される可能性もあるので、このような住民の投票が必要なのである。

■憲法改正

1、憲法改正:憲法改正とは、憲法の一部または全部を変更することをいうが、国民にとって極めて重要な問題であるので簡単に行うことはできない。憲法改正には以下のような手順が必要である。


■天皇

1、天皇:天皇は象徴であり、国事行為(憲法に書かれた権限のこと)のみを行うことができる。つまり、主権は国民にあり、天皇は国政に参加することができない。天皇は世襲制である。

2、天皇の国事行為:国事行為とは政治に実質的な関係を有しない形式的・儀礼的な行為のことである(国事行為の中には政治に関係すると思われるようなことも含まれているが)。天皇の国事行為は内閣の助言と承認が必要であり、責任は内閣が負うこととなっている

3、天皇の国事行為の種類:以下の図を参照。


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