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物権



■物権

1、物権:物権とは物を直接かつ排他的に支配できる権利のこと。物権は大きく分けて、占有権と本権がある。本権は所有権と制限物権にわかれる。下の図を参照。




■物権法定主義

1、物権の種類:物権は民法に10種類定められている。

2、物権法定主義:民法やその他の法律で定められているもの以外を作り出すことは禁止されている。これを物権法定主義(物権は法律で定めること)という。

■物権変動

1、物権変動:物権が売買などによって動くことを物権変動という。例えば、AがBに家を売った場合、家の所有権はAからBに移る。物権変動は、動産と不動産ではルールが違う

2、所有権が移るとき:意思表示が合致したときに所有権は移る。例えば、AがBに土地を売るとき、Aが売ります、Bが買いますといった時に所有権はうつる。

3、公示の原則:所有者が他人に分かるようにすることを、公に示すという意味で、公示の原則という。

4、不動産の物権変動:不動産の場合、公示するには、登記が必要。登記とは、登記所にある登記簿に名前を書くことで、所有権以外の物権についても書かれている。

5、公信の原則(不動産の場合):公示を信じて取引した人を守ってあげることを公信の原則という。日本では、不動産に関して公信の原則は認められていない。動産に関しては認められている。例えば、家の所有者はAだが、登記簿にはBが所有者だと書かれてあった場合、それを信じてBから家を買ったCがいたとする。この場合、家はCのものにはならない。

6、対抗要件:自分の権利を他人に対して主張することを民法では、対抗するといい、対抗するために必要な条件を対抗要件という。不動産では、先に登記したものが対抗要件をもつ

7、二重譲渡:二重に譲渡することを二重譲渡という。例えば、AがBに土地を売り、その後Cにも同じ土地を売ること。この場合、土地は悪意でも善意でもBとCのうち先に登記した人のものになる。AがBに土地を売ったことをCが知っていても、Cが先に登記すればCのものになるということ。

8、動産の物権変動:動産の公示は、占有による

9、公信の原則(動産の場合):動産の場合、公信の原則は認められている。例えば、Aから本を借りたBが、Cにその本を売った場合、本はCのものになる(即時取得という)。そして、所有権を失ったAはBに損害賠償の請求をしていくことになる。

■占有権

1、占有権:持っている状態を権利として認めることを占有権という。例えば、ディーラーからローンで車を買った場合、所有権はディーラーにあるが、占有権は買主にある。

2、占有の根拠:占有できる根拠となる権利のことを本権という。本権は占有権とは別扱いされる本権を持たずに占有することもできる。例えば、Aが鉛筆を買って持っている場合、Aは本権と占有権をもっていることになる。また、Bが鉛筆を盗んで持っている場合、Bは本権なしに占有していることになる。

3、即時取得:即時取得とは、動産を占有している人を正当な権利者だと信頼して取引した場合、動産の権利を取得できること。

4、即時取得の条件:物が動産であること。取引行為により取得されたものであること。善意、無過失であること。例えば、AがBから本(動産)を買った(取引行為)が、その本はBがCから借りていたものだった場合、Aが本の本当の所有者はCであることを知ら無かった場合はAのものになる。

■所有権

1、所有権:物を完全に支配する権利のことを所有権という。例えば、Aが文房具屋で鉛筆を購入すれば、Aは鉛筆の所有権を得たことになる。

2、所有権の取得:所有権を取得するためにはいくつかの方法がある。

3、無主物先占:持ち主がいない物を、先に占有することを無主物先占(むしゅぶつせんせん)といい、動産に限り所有権が認められている。例えば、Aが山でセミを採った場合、そのセミはAのものになる。しかし、不動産の場合、無主物先占は認められていない。例えば、火山が爆発して海に土地が新しくでき、それを占有しても所有者は国となる。

4、遺失物拾得:落し物を拾い、警察に届けたが、6ヶ月たっても持ち主が現れなかった場合、遺失物拾得(いしつぶつしゅうとく)といい、落し物は拾った人のものとなる。

5、取得時効:取得時効とは、他人のものを、自分のものだと思い、ある一定期間占有すると所有権を得ることをいう。善意無過失であれば占有開始から10年悪意または有過失の場合は占有開始から20年で所有権を得ることができる。

6、相隣関係:
隣に住む人とのルールのことを相隣関係という。隣から入ってきた木の枝は切るように請求できるだけで、切ってはいけない。木の根(たけのこなど)については勝手に切ることが許されている

7、隣地立入権(隣地使用権):隣の人に請求すれば、隣の土地を使わせてもらうことができる権利のことを隣地立入権とか隣地使用権という。ただし、使わせてもらい損害が発生した場合は、賠償する必要がある、

8、囲繞地通行権:袋地の所有者が公道に出るために囲繞地を通行できる権利を囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん、いじょうちつうこうけん)という。袋地とは周りを他の土地に囲まれていることをいい、囲繞地とは袋地を囲んでいる土地のことを言う。損害が発生した場合は賠償する必要がある。

9、共有:一つのものを複数で所有することを共有という。物に対する権利の割合を持分という。例えば、100万円の車をA、B、Cの3人で購入する場合、Aが60万円、Bが30万円、Cが10万円出すと、持分は、A:B:C=6:3:1になる。

10、共有者ができること:各共有者は共有物の全てを使用(車を使うことなど)することができる。管理(車を他人に貸すようなことなど)は持分の過半数で決定される。保存(車検に出すようなことなど)は各自が単独ですることができる。変更(車を売却するようなことなど)は全員の合意が必要となる

■制限物権

1、制限物権:所有権のように物を自由に使用、処分したりできる権利の一部が制限されている権利を制限物権という。用益物権(4種類)と担保物権(4種類)に分かれる。

2、用益物権:目的のために、他人の土地を利用したり、利益を上げる権利のことを用益物権という。地上権、地役権、永小作権、入会権の4種類がある。

3、担保物権:土地などの物を借金のカタにすることを担保物権という。二つに分けると、法定担保物権と約定担保物権がある。

4、法定担保物権:一定の要件を満たせば法律上当然成立する権利のことを法定担保物権という。留置権と先取特権がある。

5、留置権:債務の弁済を受けるまで、こちらが占有している債務者の物の引渡しを拒むことのできる権利を留置権という。例えば、Aの車が壊れたのでディーラーに修理を出したが、修理が終わったのにAがお金を払わなかった場合、ディーラーはAがお金を支払うまで車を預ることができる。

6、先取特権:債務者の財産から他の債権者に優先してその債権の弁済を受け取ることができる権利のことを先取特権という。民法には20種類ほどある。例えば、会社が倒産したとき、従業員は他の債権者に優先して過去の給料を受け取ることができる。

7、約定担保物権:当事者同士の約束によって発生する権利のことを約定担保物権という。質権と抵当権がある。

8、質権:お金などを借りる人が担保となるものをお金などを貸す人に差し出し、無事返済されればその担保が返される、逆に返済されなかった場合は、お金などを貸した人がその担保を売り、その代金から返済を受けることができるという権利のことを質権という。これは質権設定者と質権者との合意だけでは成立せず、物を質権者に引き渡すことで始めて成立する。例えば、A(質権設定者)は自分の時計をB(質権者)に質入してお金を借りた。Aはお金を返せば時計を返してもらえる。Bはお金を返してもらえなかったら時計を競売にかけお金を回収することができる。

9、抵当権:土地建物に債権がある場合に担保として質権を設定する権利のことを抵当権という。設定できるのは不動産だけに限られる。質権との違いは抵当権設定者は物を使い続けることができるということ。全く別の人(物上保証人という)の物に抵当権をつけることも可能。また、一つの物に対して複数の抵当権を設定することが可能で、順番は登記簿に記載した日付順で、1番抵当、2番抵当と呼ばれる

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